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「働けない…」と悩むあなたへ。発達障害で障害年金の受給を

障害年金申請の専門家ガイド

発達障害を抱える方が、日々の生活や社会生活で困難を感じている場合、国が支給する「障害年金」が生活の基盤を支えます。この公的な年金制度は、病気やけがによって生活や仕事に支障がある方が対象で、発達障害も含まれます。

本記事では、発達障害を持つ方が障害年金を受給するために必要な基礎知識から、申請要件、具体的な手順等について解説します。


発達障害で障害年金を受け取るための基礎知識

障害年金とは

障害年金とは、病気やけがによって日常生活や仕事に著しい支障が生じた場合、国から支給される年金制度です。老齢年金と異なり、現役世代でも受け取る可能性がある社会保障制度です。

発達障害は、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠陥・多動性障害(ADHD)など、その特性が生活や就労に大きな影響を及ぼすことがあります。これらは精神疾患の一種と位置付けられ、厚生労働省が定める診断基準を満たし、その障害状態が一定の基準に達すれば、発達障害を持つ方も受給対象となります。重要なのは、単なる診断名ではなく、その特性がどの程度具体的な困難をもたらしているかです。

障害年金の種類

障害年金には「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の2種類があります。どちらが支給されるかは、「初診日」(初めて医師の診察を受けた日)に、どの公的年金制度に加入していたかで決まります。

  • 障害基礎年金: 初診日に国民年金に加入していた方(自営業者、学生、専業主婦・主夫など)が対象です。
  • 障害厚生年金: 初診日に厚生年金や共済年金に加入していた方(会社員、公務員など)が対象です。障害基礎年金に上乗せして支給されます。

発達障害の場合、どちらの年金も受給対象となる可能性があります。ご自身の初診日と当時の加入状況を確認することが、申請の第一歩です。


障害年金受給に必要な要件と判断基準

発達障害で障害年金を申請する際には、以下の3つの要件と、障害の判断基準を理解することが重要です。

1. 「初診日」の特定と証明

障害年金申請において最も重要なのが、初診日の特定と証明です。初診日とは、障害の原因となった病気で初めて医師の診察を受けた日を指します。発達障害の場合、幼少期から特性があったとしても、成人してから初めて診断を受けることも少なくありません。この場合、いつから症状があったか、初めて医療機関にかかったのはいつかを正確に特定し、客観的な資料で証明することが不可欠です。

初診日の証明に役立つ資料には、医療機関のカルテ(受診状況等証明書)、母子手帳、小学校・中学校の通知表、健康診断の結果、お薬手帳などがあります。初診日が特定できないと、申請自体が受理されない可能性が高いため、早めの情報収集が大切です。

2. 「保険料納付要件」の確認

障害年金を受給するためには、年金保険料を適切に納めている必要があります。初診日の前日において、以下のいずれかの要件を満たしていることが求められます。

  1. 初診日がある月の前々月までの公的年金の加入期間のうち、3分の2以上の期間で保険料を納付または免除されていること。
  2. 初診日がある月の前々月までの1年間に、保険料の未納がないこと(特例)。

ただし、初診日が20歳前にある場合は、保険料納付要件は問われません。ご自身の納付状況は、最寄りの年金事務所や「ねんきんネット」で確認できます。

3. 「障害認定日」の考え方

障害認定日とは、障害の状態が固定され、年金の支給対象となると認められる日です。原則として、初診日から1年6ヶ月が経過した日が障害認定日となります。

しかし、発達障害の場合は少し特殊です。初診日が20歳前にある場合は、20歳の誕生日の前日が認定日となることがあります。また、発達障害の特性は幼少期から存在し、症状が固定するという明確な時期がないことも多いため、個別の状況に応じて適切な認定日を検討する必要があります。


発達障害の障害等級と判断されるポイント

障害年金には、障害の重さによって1級、2級、3級(障害厚生年金のみ)の等級があります。発達障害の場合、主に精神の障害として評価され、日常生活能力の障害の程度が非常に重視されます。厚生労働省の認定基準では、以下の項目が総合的に評価されます。

  • 日常生活能力の判定: 食事の準備、清潔保持、金銭管理、対人関係、危機対応など、日常生活における具体的な困難さ。
  • 就労状況: 一般就労が可能か、どのような配慮が必要か、短時間勤務や休職の有無など。
  • 社会生活能力: 公共交通機関の利用、地域での活動参加など、社会における適応能力の程度。
  • 精神症状: うつ病や不安障害など、併発している二次障害が日常生活に与える影響。

診断書には、これらの情報が客観的かつ具体的に記載される必要があります。医師に日常生活での具体的な困りごとや、困難な状況をリアルなエピソードを交えて伝えることが重要です。


発達障害の障害年金申請ステップ

障害年金の申請は複雑に感じられますが、一つ一つのステップを理解し、着実に進めることで、手続きはスムーズになります。

申請準備から受給までのステップ

  1. 初診日の確認と証明書類の収集: 初診日を特定し、受診状況等証明書などを集めます。
  2. 年金事務所での相談: 初診日が確認できたら、最寄りの年金事務所で必要書類や手続きの流れを確認します。
  3. 診断書の作成依頼: 現在の症状を最もよく把握している主治医に、障害年金用の診断書の作成を依頼します。
  4. 病歴・就労状況等申立書の作成: これまでの病歴、日常生活、就労状況などを自身の言葉で詳細に記載します。
  5. その他必要書類の収集: 必要な書類をすべて集めます。
  6. 書類の提出: すべての書類が揃ったら、年金事務所に提出します。
  7. 審査と結果の通知: 書類提出後、通常3〜6ヶ月程度の審査期間を経て、結果が郵送で通知されます。

診断書と申立書のポイント

  • 診断書: 医師に、日常生活での具体的な困難や就労上の問題を、具体的なエピソードを交えて正確に伝えます。箇条書きのメモを用意する、家族に同席してもらうなどの工夫が有効です。
  • 病歴・就労状況等申立書: 診断書では伝えきれない「生の声」を審査官に届ける重要な書類です。発病から現在までの経過を時系列で具体的に記述し、日常生活や就労における具体的な失敗談や困りごとを豊富に盛り込みましょう。

障害年金申請で不支給になったら?

誠実に手続きを進めても、不支給となるケースは存在します。しかし、決して諦める必要はありません。不支給の理由を分析し、適切な戦略を立てることで、再申請や不服申し立てを通じて、受給を実現する可能性は十分にあります。

不支給の理由分析と再申請

不支給となった場合は、年金機構から届く「不支給決定通知書」を確認し、不支給理由を客観的に分析します。初診日の証明が不十分、保険料納付要件を満たしていない、障害の程度が基準に満たないなど、理由に応じて対策を立てて再申請を行います。再申請は、前回の申請で不足していた情報を補強する貴重な機会です。

不服申し立て

不支給決定に納得がいかない場合、行政不服審査法に基づき「不服申し立て」を行うことができます。これには、審査請求と再審査請求の2段階があり、決定の妥当性を第三者機関に改めて審理してもらいます。不服申し立ては専門的な手続きのため、社会保険労務士に依頼することが一般的です。


専門家(社会保険労務士)に依頼するメリット

障害年金の申請手続きは、その複雑さから専門的な知識と経験が不可欠です。特に発達障害を持つ場合、その特性ゆえに申請書類の作成や医師との連携に困難を感じる方も少なくありません。社会保険労務士は、障害年金のエキスパートとして心強い味方となってくれます。

社労士に依頼するメリット

  • 手続きの負担を大幅軽減: 煩雑な書類作成や年金事務所とのやり取りなどをすべて代行してくれます。
  • 専門知識に基づいた適切な申請: 専門知識と豊富な実績に基づき、書類作成やアドバイスを受けられます。
  • 医師との連携を強力にサポート: 診断書の重要性を熟知しているため、医師への情報提供などをサポートしてくれます。
  • 不支給時の万全な対応: 不支給となった場合でも、再申請や不服申し立ての手続きをサポートしてくれます。
  • 圧倒的な安心感: 複雑な手続きや審査への不安を一人で抱え込むことなく、専門家に伴走してもらうことで得られる精神的な安心感があります。

発達障害に強い社労士の選び方

社労士を選ぶ際は、発達障害の申請実績が豊富であること、無料相談を積極的に活用して相性を確かめること、そして費用体系が明確であることを確認しましょう。できるだけ早い段階で相談することが、その後の手続きをスムーズに進める上で有効です。


障害年金以外にも活用できる支援制度

障害年金は経済的な安定をもたらす重要な制度ですが、発達障害を持つ方がより安心して生活し、社会参加していくためには、他にも多様な支援制度が存在します。

医療費・手当・就労に関するサポート

  • 自立支援医療制度: 精神疾患の治療のために医療機関に通院している方を対象に、医療費の自己負担額を軽減します。
  • 障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳): 取得することで、税金の控除、公共交通機関の割引、就労支援など、多様な福祉サービスや優遇措置を受けられます。
  • 就労移行支援: 一般企業への就職を目指す障害者向けの専門的なサービスです。
  • 就労継続支援(A型・B型): 一般企業での就労が難しい方が、就労の機会を得るためのサービスです。

その他の相談窓口

  • 発達障害者支援センター: 発達障害のある方やその家族を対象に、日常生活、就労など、幅広い分野で相談や支援を行う専門機関です。
  • ハローワークの専門援助部門: 障害のある方向けの専門窓口があり、個別のカウンセリングや求人情報を提供しています。

まとめ

発達障害を持つ方が障害年金を受給することは、経済的な安定だけでなく、精神的なゆとりや、継続的な治療、そして自分らしい就労への一歩を踏み出すための重要な支えとなります。

申請プロセスは複雑ですが、「初診日の特定」「保険料納付要件の確認」「診断書と申立書での具体的なアピール」が受給成功の鍵を握ります。もし手続きが難しいと感じる場合は、専門家である社会保険労務士に相談することを強くお勧めします。

あなたが利用できる国が用意した大切な制度があることを知り、勇気を持って一歩を踏み出してください。本記事が、あなたがより安心で豊かな未来を築くための一助となれば幸いです。

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