こんにちは、福岡市博多区の社会保険労務士・FP(ファイナンシャルプランナー)の井村太郎です!
先日、厚生労働省から「監督指導による賃金不払残業の是正結果(令和3年度)」が公表されました。
中には、1,000万円以上の割増賃金を支払った企業もあるとのこと…。
企業の残業代不払い
賃金の不払いは労働者の生活に直結する大きな問題です。
そのため、労働基準監督署(労基署)に相談が寄せられやすいものの一つが「残業代の不払い」についてです。
実際に、「会社が残業代を支払わない」という労働者からの相談をもとに、労働基準監督署から企業に監督指導が実施されるケースは多く、意図的かそうでないかに関わらず不適切な管理をしている企業は、このような監督指導によって対応を迫られることになります。
1,000万円以上の割増賃金を支払った企業も
先日、厚生労働省から「監督指導による賃金不払残業の是正結果(令和3年度)」が公表されました。
この是正結果では、労基署の監督指導により、令和3年度(令和3年4月~令和4年3月)に不払いとなっていた割増賃金が支払われたもののうち、支払額が1企業で合計100万円以上である事案がまとめられています。
これによると、約1,000社が100万円以上の割増賃金を遡及支払しており、1企業当たりの割増賃金支払い額の平均は約610万円。1,000万円以上の割増賃金を支払った企業は約100社となっています。
法定労働時間と割増賃金について
労働基準法では、法定労働時間として1日8時間、1週40時間が定められています。
この法定労働時間を超えて時間外労働をさせる場合に、通常の賃金の2割5分以上の割増賃金の支払いが必要になります。
なお、割増賃金には時間外労働に対するもののほか、休日労働や深夜業に対するものがあります。
最大で未払い残業代と同額の支払い義務が生じる「付加金」
労働基準法には、残業代等の悪質な未払いに対する制裁金として、「付加金」が定められています。
(付加金の支払)
第百十四条
裁判所は、第二十条、第二十六条若しくは第三十七条の規定に違反した使用者又は第三十九条第九項の規定による賃金を支払わなかつた使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができる。ただし、この請求は、違反のあつた時から五年以内にしなければならない。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000049
上記「使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができる。」とあるとおり、残業代の未払いが悪質であった場合、最大で未払い残業代と同額の付加金が命じられる場合があります。
尤も、付加金を請求するには労働者が労働訴訟を起こす必要があるためハードルが高く、また、訴訟に至る前に解決するケースも多いことから、実際に付加金が支払われるケースは少ないです。
おわりに
賃金の不払いは労働者の生活に直結する大きな問題である一方、25年に及ぶ長期のデフレ不況により人件費や社会保険料負担を軽減したいという企業側の実情も分かります。
もちろん、法令遵守の徹底が求められるのは言うまでもありませんが、残業代を適切に支払うなど労働法令を遵守することで、
- 雇用労働環境の改善
- 人材定着・離職防止
- 助成金の申請、活用
などにもつながりますので、改めて自社の実態を点検してみてはいかがでしょうか。
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