ブログ

【外国人技能実習制度】がもたらす弊害と制度への批判

こんにちは、福岡市博多区の社会保険労務士・FP(ファイナンシャルプランナー)の井村太郎です!

先日、厚生労働省から「外国人技能実習生の実習実施者に対する令和3年の監督指導、送検等の状況」が公表されました。

外国人技能実習制度には国際的な批判もあり、法務大臣は制度の見直しに向けた論点を発表しました。

外国人技能実習制度に関する監督指導、申告、送検の状況

令和3年の監督指導・送検の概要

・労働基準関係法令違反が認められた実習実施者は、監督指導を実施した9,036事業場(実習実施者)のうち6,556事業場(72.6%)

・主な違反事項は、(1)使用する機械等の安全基準(24.4%)、(2)割増賃金の支払(16.0%)、(3)労働時間(14.9%)の順に多かった

・重大・悪質な労働基準関係法令違反により送検したのは25件

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_27067.html

そのほか、具体的な監督指導の事例、実習生からの申告事例、送検事例は以下の通りです。

  • 違法な時間外労働…労働基準法第32条(労働時間)違反
  • (年次有給休暇が10日以上付与される労働者に対し、)1年以内に5日間以上の年次有給休暇を取得させていなかった…労働基準法第39条第7項(年次有給休暇の取得)違反
  • 割増賃金の不払等…労働基準法第37条第1項(割増賃金の支払)及び同法第24条第1項(賃金の支払)違反
  • 不当に高額な寮費が控除されていた…労働基準法第24条第1項(賃金の支払)違反など

外国人技能実習制度に関する国際的な批判、制度見直しへ

改めて、外国人技能実習制度とは、技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護を図ることにより、企業などでの人材育成を通じた技能等の母国への移転により国際協力を推進することを目的とする制度です。

企業などで人材育成し、その技術移転による途上国支援という名目で始まった外国人技能実習制度ですが、現実は、単に外国人を安価な労働力として使っている実態が指摘されており、国際的にも批判を浴びています。

米国務省より先日公表された世界各国の人身売買に関する2022年版の報告書では、

  • 日本では外国人技能実習制度の参加者が強制労働をさせられているとの報告があると指摘
  • 人身売買に関与した悪質な仲介業者や雇用主の責任を日本政府が追及していないと批判

といったことが発表されました。

これを受け、法務大臣は7月、技能実習制度の見直しに向けた論点を発表。

政府は抜本的な制度の見直しを急ぎ、具体的な見直しの議論に着手する方針とのこと。

経済的な観点からも移民受け入れ反対

前述した通り、外国人技能実習生に対する労働基準関係法令違反(これは外国人技能実習生だけには限りませんが)や国際的な批判があることはもとより、経済的な観点からも個人的には移民受け入れ反対です。(なお、移民受入とは、国連やOECDの定義によると「1年以上外国で暮らす人」を受け入れることです。)

その理由は以下の通りです。

  • 日本国民の賃金上昇が抑制され貧困化につながること
  • 各種投資(設備投資、技術開発投資、人材投資、公共投資)と経済成長が阻害されるため

また、不当に高額な借金を負って来日する実習生も存在するなど、「現代の奴隷制度」とも揶揄される技能実習制度については人道的な問題もあると思っています。

もちろん、真剣に日本で勉強したい外国人や外国人高度人材を排除するということではありません。

おわりに

外国人技能実習生については、「日本人の低賃金労働者の担い手不足」を補う部分が大きく、現に安価な労働力として使っている実態が指摘されています。

世間的には日本の人口減少が騒がれていますが、世界的に見れば日本の人口減少は誤差レベル。

それよりも生産年齢人口の減少が著しく、労働力不足が懸念されているわけですが、そんな中で安価な労働力として外国移民を受け入れているのが日本です。

結果、日本国民の賃金上昇は抑制され、所得が増えないため民間の消費も低迷。当然各種投資も行われにくくなり、日本の経済成長が阻害されています。

PAGE TOP